遺乞いの場

本・映画・展覧会などの感想を書いています。

【本】ものすごい勢いで文豪の思想に迫る「ドストエフスキー」

私はドストエフスキーの作品は罪と罰岩波文庫) しか読んだ事がないが、有名な作品は大体文庫本数冊に及ぶ長さで、私は読み始めるのに少し気合がいる。
この本はドストエフスキーの生涯や彼が生きたロシアの状況から、彼の作品に込められた思想を解説する本だ。ドストエフスキーの作品とは真反対の薄い新書本ですぐ読みきれるにもかかわらず、内容は大変充実しているし、何年も前に罪と罰を読んだだけで他の知識が皆無の私でも「そういうことね」と思わせる説得力がある。

この本が取り扱ってる主な話題

とくに逮捕~シベリア流刑での体験がドストエフスキーに与えた影響の考察、そこからつながるロシア正教への想いのあたりは、ドストエフスキーの思想を知るのに大変役立つと思う。
また、ドストエフスキーの思想がどの作品においてどう反映されているかも書かれており、作品と結び付けやすいのもよい。

罪と罰はペテルブルクを舞台にした殺人事件をめぐる作品で、背景の思想を知らずとも引き込まれるものがあるから、いち読者として読むだけならばそれでもいいと思うが、せっかくなので作者の思想も知った上で楽しむもの良いと感じた。気合を入れて他のドストエフスキー作品にも触れたい。

個人的には、作品の既読未読にかかわらず、この作家について知りたいと思っている場合に読むといいと思う。と思ったけど薄い本なのでみんな読むといいと思う。(シベリア流刑情報もあるよ!)


ドストエフスキー関連だと以前感想を書いた「『罪と罰』を読まない」という、豪華な参加者達が「罪と罰」を読まないで内容を想像しながら語る読書会本がある。感想では後編の前に罪と罰を読むことを進めているが、今思うと登場人物に対する印象などに先入観を持ってしまうかもしれないので、この本を開く前に一度罪と罰を読了した方がいいと思う。
ikoinoba.hateblo.jp

【映画】悪の教典

悪の教典」を見た。
主人公・蓮実聖司はある高校で教壇に立つ人気教師だが、実は凶悪な殺人鬼で…というサイコ映画だ。原作は小説(未読)。

私はサイコ(狂人が暴れる)やスプラッタ(血が飛び散る)といったジャンルが好きだ。映画に限らず人が死ぬか否かがフィクション作品に対する興味に直結している。
なぜそうなのか、命に関わる話題を扱う緊張感のあるストーリーを楽しみたいのか、フィクションで人が死ぬところが見たいのか、はっきりはわからないが、フィクションに日常ではありえない(あってほしくない)ものを求めがちなのはおそらくそうだ。
サイコやスプラッタでは異常な精神や知能・身体能力などを持っためちゃくちゃな殺人者、現実でないからこそ楽しめる派手なスプラッタショーなどを求めているのだと思う。(本物のグロ画像は無理だ)
そういった観点から見ていると、自分はこの映画はあまり好きではない。

登場人物や舞台設定に魅力を感じない

主人公の蓮実が殺人鬼として魅力に欠けている。
まず被害者の選定理由が「自分の身近にいる気に食わん奴」or「殺人の隠匿」という理解可能なものなため得体の知れなさがない。身勝手な理由で人を殺めるにしても、動機が普通の人間すぎる。

蓮実は少年時代に両親を殺害(被疑者にはならず)、その後海外に渡り大量殺人(FBI的な人に正体がバレたが国外追放で済んだらしい。普通に捕まえてほしい)、舞台の高校の前に務めていた学校では数人が死亡(事故として処理)という大変に怪しい経歴の持ち主だが警察はノーマークという、まず設定からして無理を感じてしまう。別の人間になったりしないんだ。
そんな状況なのに身近な人間を殺すので当然怪しまれる。最初の数回の殺し以外は自分を怪しむ人々を黙らせるためのものが殆どだし、その殺しの手口が雑でさらに怪しまれたりしてる。よくいままで捕まらなかったな。

それでいて頭脳派強キャラみたいな態度を取るので、そんなかっこつけられるほどかっこよくないぞ!という気持ちになり話が進むほど魅力を感じなくなっていく。
尺の問題なのか蓮実の内面を知る機会もほとんどなく何を考えているか不明で、話を進めるための殺人装置という印象だった。

殺しのターゲットとなる他の登場人物達は人数が多いわりに誰もかれも薄味で特に好感度持てる人もいなかった。ただの殺され役かと思うと主人公とヒロイン的立ち位置の人物が居たり、東大行きを豪語するお勉強できるマンが居たり、変にマンガっぽいノリが強くて方向性がよくわからなくなった。

ストーリー無理ない?

蓮実がちんたら殺してたら手落ちから怪しまれるようになっていき、隠匿のため殺す相手が増えていく…というのが端的なストーリーで、蓮実の殺人鬼としてのふがいなさをひしひしと感じる。
蓮実は最終的に文化祭の準備で学校に泊り込んでいる担任クラスの生徒を全員猟銃で撃ち殺す計画を立てる。破滅する気はさらさらなく、他の教師に罪をなすりつけて自分は社会生活を続ける気まんまんという無茶の三段重ねみたいな事をしようとする。無茶でしょ。
それなりに広い高校校舎で猟銃一本もったひとりに全員殺されるってのは無理があると感じてしまい、そのパートずっと「無理があるのでは?」という気持ちが強かった。1人でも逃せば計画は台無しになるのに蓮実は殺した生徒の名簿にまったり取り消し線引いたりしてるし、彼がうっかりさんなの知ってるからそっち方面でハラハラした。
このパートは凶器がほぼ猟銃のみなので殺し方も単調でスプラッタエンタメとしてもあんまりだし、映像的に惹かれるものもなく盛り上がれなかった。

わざわざネガティブな感想をブログに残さなくても…と思い、面白いと思えなかった作品の感想はあまり書いてこなかったが、「なぜつまらないと思ったのか」を考えてみてはどうかと思って書いてみた。
しかしなんだか細かい部分のツッコミに一生懸命になってしまい、結局なぜつまらなく感じたのがふわふわしたままなように感じる。
こうやってこまごましたツッコミが浮かんでくるのは、自分がこの映画の世界に入り込めなかったからだろうか。なぜ入り込めなかったのかは、1.軸となる殺人鬼に魅力を感じられず、2.殺人の発生過程に意外性や異常性がない、3.ストーリーや絵作りに工夫が感じられず惹かれるものがない…などが挙げられると思われる。

ちなみにこの映画最後に「To Be Continued」と出る。おう…。

【美術展】トルコ・トカットの木版(バスク)展

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www.setagaya-ldc.net
2019年07月20日(土)~2019年09月01日(日)
生活工房ギャラリー(三軒茶屋

トルコの木版プリントで彩られたスカーフの展覧会に行って来た。

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キャロットタワー
生活工房ギャラリーは世田谷三軒茶屋キャロットタワーにある。キャロットタワーは地下鉄田園都市線直結、路面電車世田谷線につながるランドマークだが、ちょっと裏側に行くと静かな住宅街になっており、地元区民の方は気軽に文化にアクセスできるのでないだろうか。(うらやましい)

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会場はガラス張りになっているので外から見える
会場(撮影可)は1フロアで構成されており、入場無料で受付もないので気軽に出入りできる。小ぢんまりとした室内は単にスカーフを展示するだけではなく、トカット地方の歴史、木版プリントの手法、用語集(持ち帰り可)などの説明もあり盛りだくさんだった。特に制作過程を解説した映像作品はわかりやすいので是非オススメしたい。

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郊外にあるアトリエは気持ちがよさそうだった
伝統的な木版ではよく乾燥させた木に線画を彫り、手作業で布にスタンプしていく。化学反応を使って白地に黒、黒字に白と使い分けて線画を描いている。
彩色方法は二通りあり、筆で塗る方法と木版でプリントするものがある。木版を使った手法は現在非常に希少だそうだ。

トルコでは頭にスカーフを巻く女性が多くいるため、古くから個性溢れるスカーフが作られてきた。現在は機械化により衰退傾向にあり、沢山合ったアトリエも郊外に1つ残るのみだとか…。

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スカーフの縁には使用者の手によりオヤと呼ばれる刺繍が付けられる。
オヤは草花をかたどったものが多く見られたが、他にも多くの種類があり、プリントに劣らず美しい。

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お手ごろ価格でかわいいトート
ショップもあり。トートバッグやアクセサリーなど2000円程度の手頃なものからオリジナル手ぬぐい、スカーフ、大物作品まで雑貨類が揃ってます。展覧会の図録はないようでした。

【資料】ルネサンス期の女性の服装

ルーベンスbotルネサンス期の画家ハンス・ホルバインを取り上げており、女性の肖像から服装がよくわかるのでメモ。




(好き)

2019/7/20追記


他の人が描いたもの。



※番外:女性の肖像ではないけどかっこいいので。

【美術展】クリムト関係の美術展とか

クリムト関係の美術展が沢山開催されているので行ってきた。

グスタフ・クリムトの世界-女たちの黄金迷宮-

グスタフ・クリムトの世界-女たちの黄金迷宮-

予習として買った。(装丁がオシャレ)
クリムトの作品をカテゴリ別にフルカラーで収録している。関連人物や世紀末ウィーンの解説もあり、分離派関係者の作品も載っていて予習復習にぴったりだった。ただ解説がちょっとポエミーで感想じみてる。

ウィーン・モダン

artexhibition.jp
都市ウィーンをメインテーマにして世紀末ウィーンの都市計画や分離派の活動を絵画・建築・家具などあらゆる芸術作品を通じて紹介していた。
分離派関連を包括的に解説しているので全体を把握できてよかった。

世紀末ウィーンのグラフィック

mmat.jp
分離派の機関紙やポスター、同時代の図案集や版画など大量のグラフィックが展示されていた。6
目黒区美術館には始めて行ったが、雰囲気よくてかっこよい美術館だった。

クリムト

klimt2019.jp
クリムトの作品を中心に展示していた。
クリムトメインに絞ってるからか、作品ボリュームは他に比べて少なく感じた。自分はクリムト作品は黄金系の絵画やグラフィックデザインが好きなのでメインのユディトⅠやヌーダ・ヴェリタス、ベートーヴェン・フリーズだけでまあいいかなと思った。

【本】Oracle関連本3冊

なんとなく寄った本屋で衝動的に表紙買いしたOracle関連本の感想を書く。(技術書は表紙買いするものではないと思う)
自分はアプリケーション開発者寄りだがコーディングとしてSQLを書く機会はゼロで、たまに性能調査に使うデータを取得したりするだけなので、なんでOracleの本買ったんだ?って思いながら読んでいた。

Oracle SQLチューニング

パフォーマンス改善と事前対策に役立つ Oracle SQLチューニングSQLチューニング (DB SELECTION)

パフォーマンス改善と事前対策に役立つ Oracle SQLチューニングSQLチューニング (DB SELECTION)

 Oracleのパフォーマンス問題を解決するにはどうすればいいのか?に注目した本。コーディング、Oracleの設定、プロジェクト管理などOracle関連の幅広い分野を扱っていて、プロジェクトをマネジメントをする人向けな印象。
 浅く広く要点が纏めらてているが、それぞれの詳細はあまり掘り下げられない教科書的な本だった。

SQL実践入門

SQL実践入門──高速でわかりやすいクエリの書き方 (WEB+DB PRESS plus)

SQL実践入門──高速でわかりやすいクエリの書き方 (WEB+DB PRESS plus)

上記「Oracle SQLチューニング」のうちSQLコーディングにフォーカスし、SQLの書き方でパフォーマンスを減らすにはどうすればいいか解説されている。アプリケーション開発者向けだと思う。
私の中で説明めっちゃうまいマン認定されているミックさんの本なので説明がうまいです。今回読んだ3冊の中で断トツにわかりやすかった。
前程知識と具体的な例を用意してくれるので、SQLの基礎知識があればつまづかないと思う。ただし後半はちょっと進んだSQLの文法(ウィンドウ関数、サブクエリ等)知識がある前程に感じた。

Oracleの現場を効率化する100の技

Oracleの現場を効率化する100の技

Oracleの現場を効率化する100の技

タイトルどおり現場でOracle弄る人向けでしかない。
Oracleに積んであるっぽいツールの説明本。正直100個のTipsに分ける必要あったのか?感がある。
自分の知識レベルや仕事内容にほぼかすらなかったのでよしあしの判断不能!!!

【美術展】ロマンティックロシアなど3つ

企画展を3つはしごしたので簡単にメモ。(大分前なのでわすれている)

ロマンティックロシア

bunkamura開館前に到着したので近くのローソンでウィーンモダンの前売り券を購入したりしてた。(寒かった)
ロシア絵画を集めた展覧会なので知らない画家ばかりだったけど、ぱっと見てきれいで写実的な絵が多かった。とくに風景画がきれいだった。子供がかわいい絵も多かった。

終わりのむこうへ:廃墟の美術史

チラシにもなってたユベール・ロベールの絵が見たくて行った。
松濤美術館は初めて行った。bunkamuraの通りを更に進んでわき道に曲がったところにある。通りの建物だけ見てると見落とす。
こぢんまりとした美術館で展示の規模も小さめだが人は結構いた。何気にルソーの絵もあった。あとはシュルレアリスム系とか国内の最近の絵(かっこいい)。渋谷が廃墟になってる絵とかあった。
物販は図録のみぽかった。

かわいい浮世絵 おかしな浮世絵

太田記念美術館も初めて行った。表参道のでかいソフトバンクの脇を曲がってすぐ(看板あり)
浮世絵専門の美術館とのこと。人が結構多くてコインロッカーが満杯になってた。
動物や謎生物系の浮世絵を集めた企画だった。可愛かったりマジで謎すぎる擬人化だったり漫画ぽくて親しみやすい絵が多かった。説明文も語り口が柔らかくて取っつきやすかった。