遺乞いの場

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【本】なんでもわかるキリスト教大事典

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キリスト教という膨大なテーマに対しする情報がコンパクトにまとめられている本。思想的な部分が取り扱われておらず、足がかりとなる基礎知識が詰め込まれている。資料としてすごくおすすめ。

本の傾向

テーマの全容と区分を示してくれている感じで、自分がどんなものを相手にしているのか理解が進む。
そういう基礎知識に的を絞ってコンテンツがごっそり取捨選択されているため、創作の資料や単に知識としてキリスト教を調べる一歩を踏み出したい人に向いている。

まえがきにも書かれているが、キリスト教そのものや特定の教派への入信を進めたり、もちあげたり、その逆もしない(キリスト教会と接触するのに興味がある人へのアドバイスは結構あるが、推奨しているわけではない)。変な言い方をすれば部外者の立場を貫いているので、同じようにただ「調べたい」人間には読みやすい。

得られる情報

キリスト教内の主な教派を列挙・教義の系統ごとに分類、比較していたのがすごくよかった。
教派の特徴や成立過程・どのような教義から分類しているのか、教義の大まかな説明や組織形態、儀式、傾向、ゆかりの人や物語などを教派それぞれに対して書かれている。
海外小説などで「バプテスト」とか「メソジスト」とか「正教会」って見かけるけど何!?となっていた身だったので、素人にもパっと理解できる言葉で解説されていて、教派解説部分だけでも十分すぎる有用さだった。

教派解説以外の情報だと、信徒や聖職者の日常生活についての解説(日常における信仰活動、祭事、聖職者の収入や服装など)や、キリスト教への接し方(キリスト教圏へ旅行に行くときの注意、教会堂への訪れ方など)が多め。教会へ属する人(修道士・牧師)へのインタビューもある。

なお、この本に含まれている情報は現代(主に日本やアメリカ)での話を前程にしているものがほとんどなので、たとえば中世ヨーロッパでの信徒生活はどうだったのか?といった事はわからない。

ビジュアル情報量はテキストと比較すると少なめだった。聖職者の衣装や祭具などのイラスト解説もあるが、私が購入したのは文庫本なので画像が小さく、ビジュアルの資料とするには心細かった。(イメージを掴むには十分有用)
また、カラーページは最初の2Pのみなので本文中のイラストは全てモノクロ。写真資料は無し。

一つ一つの話題に割かれている文字数が少なめなので掘り下げは浅いが、この本は掘り下げの深さよりとりあげているトピックの多さの方が重要だろう。

教派の系統図や対照表などの図表、索引や用語集も豊富なので手元においておく資料として最適だと思う。