【本】ロマネスクの美術
- 作者: 馬杉宗夫
- 出版社/メーカー: 八坂書房
- 発売日: 2001/02
- メディア: 単行本
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ロマネスク美術は11~12世紀くらいの西ヨーロッパに広がった聖堂建築を主軸にした中世ヨーロッパの美術様式。順番的にはロマネスクの後にゴシック美術が到来する。
西洋のひとつの美術様式を語るという専門的なテーマの本だが、話の進め方に引き込まれ、立ち上げた仮定を実際の聖堂説明を通じて証明していくシンプルな構成(各美術の詳細を説明していく過程で成し遂げている)により、素人でも迷子にならず、教会建築の魅力を知る事ができるすごい本だと感じた。
本の傾向
とにかく主張(仮定)が一貫していて、ロマネスク美術は精神的な美が追求され、自然主義・写実主義を否定する理念に基づいている。といったような説明が本文中何度もでてきて念を押される。
この理念は登場する数々の聖堂を見ていくとまったくその通りで
・遠近法とかしらねぇ!イエスは重要だからめっちゃでかく掘る!!悪魔は小さく!
・頭身とかしらねぇ!俺はこの枠の中を全部埋めるんだ!!
のような作例がガンガン出てくる。
私が一番印象に残ったのはサン・ピエール聖堂の扉口中央柱の側面に彫られた人物象だ。柱の長さに合わせて異様に縦長になった体が張り付くように彫られており、夜中に見たらきっと怖い感じだ。聖堂彫刻や壁画っていうと美人な聖人達が布をまとってすましているイメージが強かったので、そのモンスターじみた姿が衝撃的だった。
建築の大まかな枠組みの中に美術を押し込めるため、人も動物もモチーフの1つのように扱われている大胆さをことごとく見せ付けられるし、様式を遵守するあまり逆にフリーダムさが溢れているように思えるのが楽しかった。
得られる情報
ロマネスク美術は聖堂に基づいているため、教会建築の話しかない。貴族の邸宅の話とかは一切無い。
ロマネスク美術については単体の彫刻や壁画も取り扱っているが、建築様式の説明がかなり丁寧にあつかわれている。建物がどのようなパーツで構成されるのか、どの部分に主軸をおいているのかなど大まかな説明もあるし、アーチ、ヴォールト、壁面構成(アーチの上に階上廊があって~とか)の詳細な説明も実例をあげて説明されている。
また、本文に沿ったわかりやすい写真資料が多く掲載されている。随分本文の説明に沿った写真が多いなと思ったら著者本人が撮影した写真を使っているとのことで専門家パワーにひれ伏すのみ。
ビジュアル資料としても大変参考になり、一からオリジナル聖堂デザインできるのは!?という気持ちにさせてくれる。オススメ