遺乞いの場

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【本】万能人の人生を追う「神のごときミケランジェロ」

神のごときミケランジェロ (とんぼの本)

神のごときミケランジェロ (とんぼの本)

池上英洋 『神のごときミケランジェロ』 | 新潮社

ド素人の自分がミケランジェロの作品を見てもやっぱり「神か?」と思うので、神のごときと呼ばれるのはまさにぴったりだなと思う。
今回はミケランジェロと理想の身体 ‐ 国立西洋美術館に行く前に、彼の作品とか生涯を追ったことがなかったので予習しとこうと思って読んだ。

ミケランジェロの人生をいくつかのセクションに分け、その時期の彼の足取りを追いながら代表作や周辺の出来事を見ていく。
結構なページ数を作品の写真が占めていて、主要な作品の場合は1作品で数ページ丸々使ってオールカラーで掲載されている。
テキストは簡潔だけど伝えたい部分をおさえた語り口で読みやすい。ユーモアもあって教科書的雰囲気はまったくなく、ミケランジェロや周辺の人々のちょっとしたエピソードにも親しみを感じる。
文章ボリュームが抑えられているので挫折する心配はない。

サン・ピエトロ大聖堂改装は好きなエピソードの1つで、工事が進まない中で建築主任が次々変わり(死亡による交代なので仕方がないのだが)方針も変わりでグダグダしていたところ、主任を引き受けたミケランジェロは計画をばっさり切り替えて軌道にのせた。ミケランジェロのプロなコスト意識を持ってるところ好きである。(めちゃ帳簿つけてたらしい)

用語の解説などはあまりないが、参考文献がついているので詳細を辿る事ができる。また、巻末の年表はミケランジェロの滞在場所・その時期の教皇などの情報がぎゅっとまとまっていて大変有用。
ミケランジェロの作品保管場所一覧もついてたり、一般向けの入門書としてすごくよい作りになっていると思う。(他のミケランジェロ本読んだことない人の意見)