【本】ものすごい勢いで文豪の思想に迫る「ドストエフスキー」
- 作者: 原卓也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1981/07
- メディア: 新書
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この本はドストエフスキーの生涯や彼が生きたロシアの状況から、彼の作品に込められた思想を解説する本だ。ドストエフスキーの作品とは真反対の薄い新書本ですぐ読みきれるにもかかわらず、内容は大変充実しているし、何年も前に罪と罰を読んだだけで他の知識が皆無の私でも「そういうことね」と思わせる説得力がある。
この本が取り扱ってる主な話題
- 物語の舞台として登場するサンクトペテルブルクの歴史とドストエフスキーのこの都市への考え方
- ドストエフスキーの生涯におけるできごと(とくにシベリア流刑時代)
- ドストエフスキーの宗教思想
- ドストエフスキーの生活について恋愛遍歴やギャンブル中毒など
とくに逮捕~シベリア流刑での体験がドストエフスキーに与えた影響の考察、そこからつながるロシア正教への想いのあたりは、ドストエフスキーの思想を知るのに大変役立つと思う。
また、ドストエフスキーの思想がどの作品においてどう反映されているかも書かれており、作品と結び付けやすいのもよい。
罪と罰はペテルブルクを舞台にした殺人事件をめぐる作品で、背景の思想を知らずとも引き込まれるものがあるから、いち読者として読むだけならばそれでもいいと思うが、せっかくなので作者の思想も知った上で楽しむもの良いと感じた。気合を入れて他のドストエフスキー作品にも触れたい。
個人的には、作品の既読未読にかかわらず、この作家について知りたいと思っている場合に読むといいと思う。と思ったけど薄い本なのでみんな読むといいと思う。(シベリア流刑情報もあるよ!)
ドストエフスキー関連だと以前感想を書いた「『罪と罰』を読まない」という、豪華な参加者達が「罪と罰」を読まないで内容を想像しながら語る読書会本がある。感想では後編の前に罪と罰を読むことを進めているが、今思うと登場人物に対する印象などに先入観を持ってしまうかもしれないので、この本を開く前に一度罪と罰を読了した方がいいと思う。
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