遺乞いの場

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【本】余分なものをそぎ落として構図の法則に迫る「風景画の描き方」

風景画の描き方

風景画の描き方

  • 作者:ジャック・ハム
  • 出版社/メーカー: 建帛社
  • 発売日: 2009/04/21
  • メディア: 大型本
「人体のデッサン技法」などの著者ジャック・ハム氏による風景画の入門書。
恥ずかしながら「人体のデッサン技法」は挫折してしまって本棚で眠っているのだが、「風景画の描き方」は最後まで読むことが出来た。

主に鉛筆やペンなどを使った手法を前程にした風景画の本だが、前半の構図の解説は風景画以外の画面作りにも応用できそうな話になっている。
解説される手法は、一つ一つが小さいレベルまで分解され、短い文ではっきり言語化されているので初心者にも飲み込みやすくてよかった。


前半は一旦木や山から離れて、単純な図形を使って良い構図の作り方を解説している。
このパートにおける単純化はかなり徹底していて、キャンパスの形から話が始まり、3分の1程度は線のみを使って解説している。このやりかたはとてもありがたかった。これがもし木や丘を使ったものだったら、私はそれらのシルエットやタッチに気をとられてしまって先に進めていなかったかもしれない。
解説の内容もカタログ的な構図の説明でなく、良い構図にするためにおさえるべきポイントを的確に教えてくれる。言葉にしてしまえば単純なコツなのだが、自分で見つけ出すには相当な時間がかかる事をポンっと教えてもらえてあまりにもお得だ。
この前半部分を読むだけでも、0から画面の構図を考え出す能力を上げられると思う。

後半は風景を構成するパーツ(木・岩・山・雲・空・水・建物)の描き方に入る。
構図のパートと同様に、どう描けばそれらしくなるのかコツを教えてくれる。また、簡単なステップで機械的に組み立てる手法などが紹介されていて、こちらも初心者には嬉しい。
木や雲など種類が沢山あるパーツの場合はカタログ的にまとめられているのであとから読み返すときに便利だ。

なにも経験値がない初心者でも、風景画ならば「それらしさ」にたどり着きやすいように感じる。(当然奥は深い)
リターンが大きいのでモチベーションもあがるし、ちょっとした風景をさっとかけるようになればイラストや漫画の背景も寂しくならなくて仕上がりに納得できるようになりそうだ。
風景なんて絶対無理だと思っていたけれど挑戦してようと思えたのはとても大きい収穫だった。