【美術展】西洋の木版画展
西洋の木版画展に行った。
会場の町田市立国際版画美術館は町田駅近くの芹ヶ谷公園内を下った先にある静かな美術館だ。
西洋世界における版画の歴史を最初期から現代まで、木版画を取り巻く時代の変化を追いながら紹介した展覧会だ。(一部を除き撮影可)
入場券を購入すると解説付きの作品リスト冊子がもらえるのがありがたい。
初期の中世的な絵の作品が並ぶ中、デューラーのコーナーに入ると一気に展示の雰囲気が変わる。
陰影、質感、人間の自然な描写、構図など、強いこだわりが感じ取れる繊細に描き込まれながらも力強い作品群は印象的だった。本展示ではデューラーが作成した同じ題材の木版画と銅版画の作品を並べて展示しており、比較するのが面白い。
繊細な作品と言うとギュスターヴ・ドレの作品もよかった。
神曲やドン・キホーテなどの挿絵を描いた人だ。本展示では神曲を描いた作品が展示されていた。
ドレの作品では非常に綿密に雲や明り、人物が写実的に描かれている。暗いシーンにおける明りの表現が大変劇的で強い印象を与える。
後半に入ると木版画は庶民の生活に浸透していく。子供向けの多色刷り絵本ではカラフルで可愛らしいイラストが表現されており、木版画の役割の移り変わりが興味深い。
近代以降、印刷技術や写真が発達すると、木版画でしかできない表現を模索するような抽象的な作品が見られた。
私はアンリ・リヴィエールというフランスの作家の作品が大変気に入った。
単純な描き込みでありながら、大胆な色の使い方が絵の印象を作りだしている。どことなくアニメ的な印象も受けるのも不思議だ。
初期のいかにも版画らしい版画郡や可愛らしい多色の絵本、近代以降の単純化された新境地など、木版画の変化をよく理解することができるよい展覧会だった、